ぼくらシリーズ人物紹介

菊地 英治

「ぼくらシリーズ」の主人公にして、いたずらと閃きの天才。その才能は城山ひかると並び、ぼくらの中でも燦然と輝いている。たとえば、おっかなそうな人がベンチを占有しているからといって、全身に砂糖をばら撒いて蟻に寄り付かせてその場から追い出させた。(ぼくらの天使ゲーム)。

心根は優しく、白血病の中川冴子を、まわりから冴子が好きなのではないかと誤解されるほど気遣っていた。

サッカー部に所属していたが、七日間戦争のせいでサッカー部が解散、一時的に剣道部に所属していたことがある。沖縄に行って悪辣な地上げ屋と戦ったり、C計画が実行されたのもこの頃だ。

高校は相原と同じくN高に進学、それからすぐに麻衣の救出劇を演じた。また、部活動では再びサッカー部に所属した。サッカー部に関しての英治の活躍は「ぼくらの『最強』イレブン」に詳しい。父英介が会社AA商事を立ち上げると手伝いをしていた。ひかるとのいたずらの合戦が起こったのもこのころだ(ぼくらの『第九』殺人事件)。

その後一浪しながら北原の手伝いをして勝鬨中学の教師補佐をする過程で教師になることを決意する(ぼくらののら犬砦)。大学では言語学を専攻する(ぼくらのグリム・ファイル探検)。

恋愛関係では、初めは純子のことが好きだったが、だんだんにひとみが好きになってゆく。そしてその後、ひたすらひとみを追いかけていくことになるが、ひとみとはすれ違いっぱなしで、一途な英治とは裏腹にひとみは大学生と付き合ったりしていた。この二人がゴールインするのだろうか。それは最後まで読んでのお楽しみだ。

大学を卒業した英治は進路を完全に教師に定めた。そして、いまの醒めた子どもたちに熱いぼくらの心を伝えていくことを胸に、悪魔教師としてさまざまな中学校を渡り歩いている。その方法をひとみは気に入らない。それというのも、英治のやり方は自分自身が悪辣な教師となることによってクラスのねじれた既成秩序を一時的に破壊し、その上で団結力を植えつけさせるという方法だからなのだ。

相原 徹

英治の親友で、ぼくらの冷静な指揮官。その落ち着きぶりは、他のメンバーにはないレベルに達している。だが、それゆえに英治の熱さがうらやましく感じることもあるようだ。

指揮官としての相原は、七日間戦争においては全面的に指揮を執り、大人たちを翻弄した。また、そもそも七日間戦争の立てこもりを考えた張本人が相原だし、天使ゲームを考え出したのも相原だし、朝倉沙織の父が経営する幼稚園を老稚園にしようと言ったのも相原だ。このように、相原は智恵も持ち合わせている。それは、中学卒業のときに安永をおさえるためにわざと安永とケンカしたことからも見て取れる。これは同時に、相原がただのいい子ちゃんではないという証でもある(ぼくらの最終戦争)。

相原と英治の仲は親友以上だ。英治が誘拐されたとき、相原は体半分が麻痺してしまったかのように感じていたほどなのだから。

高校は英治と同じN高に進学。英治と行動をともにし続ける。英治と相原はどうあっても名コンビなのだ。その後相原は国際ジャーナリストを志すようになった(ぼくらのロストワールド)。大学の受験直前、中川冴子が死んだときはさよならパーティーを企画するが、英治のようないたずら心がないぶん、しんみりしたものになってしまった(ぼくらの卒業旅行)。

その後、国際ジャーナリストを目指す相原はアメリカへと渡ったが、いろいろなときにぼくらとともに活躍している(ぼくらのグリム・ファイル探検、ぼくらのラストサマーなど)。

相原は近頃の子どもたちに関して持論がある。かつて貧乏だった時代、子供達は自分で何でもしなくてはならなかった。だから、パワーがあった。しかし今の子ども達は保護されすぎた。それだから自分で力を入れて何かをする必要が無い。だから、パワーが無いのは当たり前なのだ、というものだ。

恋愛関係ではオクテで、ルミから妹志願の手紙を貰ってもいまいちそっけないし、その後ひかると仲良くなっても付き合っているというふうではない。

アメリカの大学を卒業した相原は今ではアジア特派員としてアジア地域を飛び回り、非常に忙しい生活を送っている。それでも、ぼくらに何かあったときは可能な限り助けてくれる頼れる存在なのは間違いない。

安永 宏

友達思いで、ケンカの達人。英治にケンカの仕方を伝授したこともある。

安永はもともと大人を嫌っていた。というのも、安永の父が酒とばくちが大好きで、気が向いたときしか仕事に行かない。母が文句を言うと暴力を振るうからだ。だから、後には打ち解けていくにせよ、七日間戦争のはじめには瀬川のことをも軽蔑していた。

そんな家庭環境のなか、中学二年生の秋に安永の父は交通事故で働けなくなってしまう。そこで、家族は内職、彼は肉体労働、すなわち建設現場の下働きをしながら家計を支えていた。そこでぼくらは安永を助けるための金儲けを提案する。しかし、「おれは、筋の通らねえ金は受け取らねえことにしてるんだ」。安永はちょっとやそっとでは受け取らない。一本気で筋を通す。これが安永を貫く生き方である。その後、マー坊という悪ガキの家庭教師をすることになった。そのとき分かったことだが、安永のツッパリは子どもには通用しない。裏を返せば子ども好きなのだ(ぼくらの危バイト作戦)。

ぼくらのなかでは唯一高校に進学せず、就職した。それでも、ぼくらが何かするときには必ず休みを取って参加してくれる、頼もしい仲間だ。あるとき、安永が電話で受け答えをする様子を見た矢場は立派になったと安永を褒めちぎった。社会人になって、ずいぶんと成長したのだ(ぼくらのミステリー列車)。

そして、大学検定を取り浪人こそしたものの大学に合格した。なお、大学検定というのは高校を何らかの理由で卒業できなかった人でも検定を通りさえすれば大学を受けられる、という制度のことだ。うまくすれば、高校にいかずに高校生と同い年で大学進学することも不可能ではないし、検定問題自体も勉強さえしていれば何ということのない内容だ。もし、高校に不満があって辞めてしまうよりなかった人も、こうして大学に行ける、というわけだ。

恋愛関係では久美子一筋。一筋に結婚まで考える中学生というのもちょっと早すぎるのではないですかと言いたくなるが、久美子とはその後本当に結婚、一児の父となり、小売業を推し進め、今では久美子の建設会社をついで再建に奔走している。

柿沼 直樹

大病院の御曹司で、超のつくカッコ付けでナンパ師。だが、本当は好きになった女の子には一途な男でもある。

七日間戦争では、参加する予定が誘拐されてしまった。しかし、得意の暗号でぼくらに警察をも出しぬかさせたのだ。そして、ぼくらが捕らえた犯人に同情したぼくらのために、父への不満を晴らすために、身代金を奪い取って与えてしまったのである。

柿沼は片岡美奈子事件では大活躍した。あのとき、片岡が妊娠したかもしれないという話を聞き、こっそり親にばれないように柿沼産婦人科で何とかしてくれと頼み込まれた柿沼は、なんと自分が片岡を妊娠させたという大嘘をついてしまうのだ。軽井沢の別荘で知り合った旧家の令嬢である大岩という女の子とそういう関係になったということにして、親に内緒で妊娠検査から何からできるような段取りを整えてしまうのだ。、しかし、片岡は自殺してしまう……おっと、ここからは本編を参照してもらいたい(ぼくらの天使ゲーム)。

高校はT高に進学。しかし、ぼくらとは常に行動をともにし、常にそのキザっぷりを見せ付けてくれた。例えば、これは中学時代だが、悪辣な建設業者を打ち倒すべく沖縄に到着したとき、白のスーツに赤いネクタイで決めた柿沼とその後ろの天野はまるでニースにやってきた貴族の息子とその下男かお抱え運転手のように見えてしまっていた。

恋愛関係では、ずうっとちゃらちゃらしていると思われていたけど、三矢麻衣に一途にホレていた(ぼくらの大脱走)。だから、麻衣が交通事故で死んだときは相当ショックだったらしく、その後もかなり長い間麻衣のことを引きずっていた。佐織と付き合ってそのショックはずいぶんと和らいだようだが、それでも完全とはいかないらしく、時折思い出すシーンがある。

その後の柿沼は四浪して何とか医大に合格し、今では二十四時間働きづめの生活を送っている。ちょび髭を生やしげっそりした姿は立派な研修医だ。

天野 司

プロレスが大好きで、プロレスを見聞きしているうちに当時プロレスの実況をしていた古舘伊知郎の物真似が格段にうまくなった。そのことから、ぼくらの中では実況担当として永く活躍することになる。その舌はどこであろうと滑らかに滑り出し、とどまることを知らない。

その活躍はいたるところで見られ、例えば七日間戦争においてはにっくき体育教師酒井に一人プロレスをやらせた。すなわち天野の実況の下ひとりでプロレスをするわけだ。また、解放区最後の実況放送をしたのも天野だった。麻衣を救出したときには「ただいま解放軍が到着した。今悪党どもを一掃中だ。間もなく諸君は解放される。もう少しのしんぼうだ」といって麻衣やその仲間たちを勇気付けた(ぼくらの大脱走)。一方、相原と安永が喧嘩したときには、おちゃらけた実況放送をして二人の戦意をなえさせてしまった(ぼくらの最終戦争)。このように、天野はどのような場面、どのような種類の実況でもやってのけるのだ。このように、実況根性はすさまじく、「おい天野、実況しろ」。「OK。こういうときのために、おれはいつもテレコを持っているんだ。じゃあ、はじめるぜ」。いつでも、どんな状況ででも実況できる用意を持っているのだ(ぼくらのC計画)。

また、声色も得意で、いろいろな声が出せる。それにしても、大前田B五郎はさすがに相手にバレバレじゃないか……?引っかかってくれたからよいようなものの。

高校はA高に進学。コブラ記念日では立派に司会を務め上げ、その腕前は本職の矢場からほめられるほどであった。

要するに、天野は天性のレポーターといっても過言ではない。そしてその天性のレポーターぶりが常に発揮されている、というわけだ。皆さんの予想通り、その後の天野はテレビレポーターとして成長を続けており、今ではテレビ局の報道部でいつも飛び歩いていて、ぼくらが連絡しても会う時間がないほど忙しい生活を送っている。

日比野 朗

おっとりした性格と声でぼくらを和ませてくれるぼくら一の巨漢。タダのデブとも言わないことはない……。だが料理の腕前には自信があり、将来はシェフになろうと思っている。

日比野は活躍するというより失敗するイメージの方が強いのは筆者だけだろうか。いろいろなところで失敗をやらかしている。たとえば、沖縄では悪徳建設業者に小便を掛けられる(ぼくらの秘島探検隊)し、そもそもダイエットに成功しないのだ。こいつはいつまでたっても。何度決心しても。何度やっても。

高校はF高に進学。同じ高校に進んだ久美子とともに麻衣を元気付けるための赤城行きを発案したこともある。しかし、結局麻衣はこなかった……ぼくらの仲間は、拒絶されてしまったのだった(ぼくらの恐怖ゾーン)。

また高校時代から夏休みなど学校の長期休業にはイタリアに渡り、シェフとしての修行をしており、その頃から料理の腕前は絶賛されていた。

そして、高校を卒業するとともに本格的にイタリアにわたり、シェフとしての腕を磨くべく修行をしていた。そんな中将来魔女にならなくてはならない運命にあるという美少女ルチアと出会い、必死の逃避行を繰り広げるのだ。そしてイタリア中を駆けずり回り(ぼくらの魔女戦記T)、ぼくらもそれを追って合流し(ぼくらの魔女戦記U)、魔術の世界との決死の戦いを繰り広げるのだ(ぼくらの魔女戦記V)。しかしその後、ルチアと仲良くなるかと思いきややはり日本人がよかったのか、ルチアとの恋愛的な発展はなかった。もっとも、それからもルチアはお忍びで日比野の料理を食べにきてくれるといい、手紙だけはつねに連絡を取り合っている。

その後、日比野は一流のシェフとなって日本に帰ってくる。そして、純子にプロポーズし、めでたく結婚し、今ではうまくやっている。しかし、結局痩せるという夢は果たせていない。だが、巨漢のシェフと言えばさまになっているから、それでよいのかもしれない。

中山 ひとみ

ぼくらシリーズのヒロイン。まっすぐで意地を通すところがある。一流料亭「玉すだれ」の娘だが、だからといっておしとやかな性格だ、とはとてもいいがたい。

ひとみは活躍したり失敗したり、行動力に実力が伴っていないところがないこともない。たとえば、あるときわけあって矢場の尾行をしていたが、顔を合わせた瞬間表情を変えたり茂みに隠れたりしたので、矢場にはすぐにばれてしまった。ほかにも、自信を持って臨んだ悩殺攻撃は何年もかかって、三度目にしてやっと成功、といった具合である。

高校はしつけを身に付けるために聖フランチェスコ学園というお嬢様学校に進学。それでもいたずらの虫は収まらないらしく、城山ひかるらとセブン・シスターズを作り、学校で壮絶ないたずらを繰り広げていたらしい。その矛先はぼくらにも向き、セブン・シスターズ対ぼくらの凄絶ないたずら合戦が繰り広げられることにもなった。そのときのひとみはおもにセブン・シスターズの側につきながらも英治とも連絡を取るという、少し微妙な役回りを演じることになった(ぼくらの『第九』殺人事件)。

恋愛関係では、英治と相思相愛なのになかなかうまく言い出せず、ずっと中途半端な関係が続いていた。その間、他の男の子とデートに行ったりと、ひとみの考えていることはいまいちよくわからない。とりわけ、大学生と付き合ったときは大変だった。というのも、ひとみが付き合っている大学生というのが大麻の常習犯らしいからなのだ。大義名分ができた英治は大学生に決闘を申し込み、倒してしまった(ぼくらのメリークリスマス)。しかし、やはりおたがいすれちがいばかり。それでも、英治が誘拐されたときには完全に取り乱し、自分の気持ちを理解したようだ。

その後、ひとみは英治と同じく中学教師となり、一時は秋田へ赴任していた。そして、まっすぐな信念を貫く教師として活躍している。そのぶん、英治の悪魔教師ぶりは気に入らないと公言してはばからないのだが。

橋口 純子

ぼくらの「おふくろさん」。包容力を持ってぼくらを包み込んでくれるような存在だ。純子は来々軒というラーメン屋の長女で、いつもそこで手伝いをしている。だから、掃除洗濯、オムツの替えまでお手のものだ。両親がクリスチャンなので子どもをおろすということをしないから、家族は非常に多く、ついには10人を超えてしまっている。

常におふくろさん的役割で、純子自身が活躍するシーンというのはあまりない。しかし来々軒と純子をセットにすると、来々軒といえばぼくらの溜まり場、そしてそこでは純子が常に働いている、といったふうに、ぼくらのメンバーでありながら蔭からぼくらの結束を支える役割をも果たすという、大事な存在となるのだ。変わることを拒む親父さんの力も大きいのだが、このような会話がある。「ここの味は十年前とちっとも変わらない」「まったく進歩しないと言いたいんでしょう?」「違う。変わりすぎる世の中で、変わらないものが残っているというのは、心が安らぐものだ」(ぼくらのラストサマー)。なお、英治とひかるのいたずら対決の戦場も来々軒だった。

初めは高校には進学せずに家の手伝いをするつもりだったが、結局A高に進学した。そして、あいかわらずぼくらとともに活動を続けた。その様子はぼくらの高校生時代を描いた作品に詳しい。

恋愛関係としては非常に複雑で、中学一年の頃は英治から好かれており、純子も好きだったようで、英治のことを「英ちゃん」と呼んでいて相思相愛の関係にあったようだが、その後英治はひとみが好きになってしまった。だけれども純子はそれからも長い間やはり英治のことが好きだったようだ。(ぼくらの『第九』殺人事件など)

その後、日比野からプロポーズを受けた。そのときはその場のノリという感じだったが、その後正真正銘のプロポーズを受け、無事結婚し、今では幸せな家庭を築いている。

瀬川 卓蔵

ぼくらの「知恵袋」。ぼくらが七日間戦争で立てこもった廃工場に住んでいたホームレスのおじいさんで、昔戦争に行き左手には四本の指が無く、腹には大きな傷がある。ぼくらと出会うまでは絶望的な生活を送っていたようだけれど、ぼくらと出会ってからは元気爆発、経験の豊富さと行動力で大活躍をした。

七日間戦争において、本当の意味でぼくらに闘い方を教えたのは瀬川だ。歩哨を立てるということ、戦いの心得を知らせるということ……。その後もいたるところでぼくらに的確なアドバイスをしてくれた。悪辣な地上げ屋との戦いで勝ち取った銀鈴荘ができてからは銀鈴荘の住人となり、さよらほかの住人と仲良く暮らしていたようだ。しかし、ぼくらと動くときには目つきが変わり、いざとなれば老人とは思えない速度でトゥデイやパジェロをぶっ飛ばしたりしながら、ぼくらの実にすばらしいブレーンとして活躍した。

そんな瀬川もさよおばあさんが亡くなってからはすっかり元気をなくしてしまった。それでもぼくらが訪れて何か助言を請うと、その目はすぐさま往年のヒーローのそれに戻るのだった。しかし、そんな瀬川も年齢には勝てず、ついに死んでしまう。そのあたりのことは「ぼくらのコブラ記念日」に詳しい。しかし、ぼくらに大事なものを遺してくれたおじいさんであった。

ぼくらが30歳になったおり、英治たちは再び子どもたちにぼくらのような力を与えるための戦いを始めた。そのきっかけも、瀬川にあった。ぼくらが30歳になったときにあけてほしいという手紙があったのだ。そこには、およそこう書いてあった。「大人になれば子どものころの情熱を失ってしまうものだが、君達にはそうなって欲しくない。その情熱を胸に、次の子供達を幸せにしてやって欲しい。もし次の子供達が不幸であれば、そのときは彼らを幸福にするために戦って欲しい」。相原の持論からして、子どもたちはどう考えても幸福ではない。そこでぼくらはふたたび戦いを始めたのだ。

矢場 勇

ヤバイ・サムと呼ばれた敏腕だがイヤミな芸能レポーター。一見すると頭のてっぺんがすっかり薄くなったとッちゃん坊やのような風貌。しかし、七日間戦争でぼくらと出会ってからは自分の本当にやりたかったことを取り戻し、報道のさまざまな分野で活躍している。また、ぼくらのことを対等に見てくれる数少ない大人でもあり、ぼくらからの信頼は厚い。

そんなわけでぼくらから情報を得ることも多く、そのたびに大スクープをたたき出している。また、政界の黒幕についての秘密が書かれている黒い手帳争奪コンペが開かれたとき、それを最初に、そして最終的に手に入れたのも矢場だ(ぼくらのC計画)。

しかし、一方で追っていた事件が竜頭蛇尾になってしまうことも多い。なぜなら、矢場が追いかける事件が構造的悪に根ざしていることが多く、途中でうやむやになってしまうのだという(ぼくらの最終戦争)。

ところでなぜイヤミになっていたかというと、仕事にかまけすぎて家庭事情が悪化、離婚してしまったのだ。しかしその後、別の女性伊代と再婚することになる。そのときの矢場のプロポーズは非常に熱烈だった。そのあたりのことは『ぼくらの恐怖ゾーン』に詳しい。ところで、矢場と結婚した伊代さんはその名もヤバイヨでちょっとかわいそうかも。

とりわけ瀬川なき後、ぼくらの行動力を支えたのは矢場だった。ぼくらのために何度かマイクロバスを運転したこともある。

また、矢場自身ぼくらと居ることが幸せなのだ。なぜなら、彼らは七日間戦争以来ちっとも変わらず仲良く、団結し、また正義感を持ち合わせている。そんなぼくらとともに過ごしていると、幸せな気持ちになり、力が湧いてくるのだから。

その後、教育に疑問を感じていた矢場は教育を報道するばかりでなく、実際に現場に飛び込むことを痛切に考え、たまたま見かけた民間人校長の募集に志願、今では中学校の校長として活躍しており、英治と共闘したこともある。

堀場久美子

気が強くて、スケ番。喧嘩をすれば負け知らず。その蹴りはどんな相手でも一撃で伸ばしてしまう。

とてもじゃないがお近づきになれそうにもないお方に見えるけれども、実は心優しくて、スケ番をやっていることにしたって親への反発なのだ。

父親の仙吉というのは建設会社の社長なのだけれど、自分の欲望のためだけのために市長に取り入っていたのだ。正義感の強い久美子にはそれが許せなかった。そこで七日間戦争のときにはぼくらとともに市長たちをコテンパンにやっつけてしまうのだ。
その父親はついに逮捕されてしまう。久美子は、泣いていた。意外に、久美子は仙吉のことが好きだったらしい(ぼくらの修学旅行)。その後仙吉はいい親父さんになった。

じゃぁそれからの久美子はおしとやかなだけの女の子にでも生まれ変わったかといえば、そんなことは決してなかった。正義感が強いだけではなく、喧嘩をしても一番だった久美子はそれからもぼくらの数々の戦いに参加していく。色仕掛けでは失敗したけれども・・・(ぼくらの秘島探検隊)。

いつのころからか安永と仲良くなり、付き合うようになっていった。そのふたりが、決して久美子のせいでも安永のせいでもないのだけれど、完全に縁が切れてしまいそうになったことがいちどだけある。時々見せる軽率さが裏目に出て、ひとみとともに知らない人に連れられていってしまい、ふたりで魔女に捕まってしまったときだ。そのとき久美子は操られてしまい、安永に「私は知らないね」と言い放ってしまい、安永を悲しませた(ぼくらの魔女戦記V)。この、操られていたとき以外はずっと安永一筋で、二人はついに結婚する。それまで久美子はデザイナーを目指してミラノへ行くなか、仙吉の会社が倒産して仕送りがなくなったりするけれど、そこは久美子のこと、アルバイトをしながらじゅうぶんやっていっていた。

いま、二人には子供がいる。末永く、お幸せに。

中尾和人

正真正銘の天才。だけど、運動はさっぱり。秀才型かと思うと、そのくせいやみが無い。要するに天才だ。それで中尾は尽きている。

柿沼とは暗号のやり取りをして遊んでいたので、七日間戦争で柿沼が誘拐されたとき、柿沼に手紙を送らせるよう仕向け、柿沼からの暗号を受け取った。それが決め手になり、ぼくらは警察を出し抜いて誘拐犯を取り押さえることができたんだ。

中尾は頭を使うことにかけてはできないことはひとつも無い。七日間戦争では廃工場に迷路を設計した。天使ゲームをしたときには校則に阻まれて集まれないぼくらが集まれるように相原進学塾に全員が入ることを思いついた。教師の暴力に対抗するためのアンポ・クラブの会則を作ったのも中尾だ(大冒険)。さらにC計画のときには黒い手帳をめぐってマスコミをきりきり舞いさせた。

卒業前の謝恩会のときには生徒代表挨拶もこなしている。

いっぽうで運動はさっぱりだ。中学時代はサッカー部で熱心に練習していたが、ちっとも上達しなかった(七日間戦争)。さらにサッカー部がつぶされたあと剣道部に入るのだけど、そちらでもさっぱり。

でも、じゃぁ何もできないかと言えば意外とできたりする。腕立て伏せが強いのだ。また、高校時代はアーチェリーで活躍した。インターハイでもいい線行ってるっていうんだから、相当な腕前だ。その腕前が役に立ったこともある(ぼくらの大脱走)。

これだけの頭を持っているんだからとうぜん日本一の成績を誇るT大に進学したのかと思えば、偏差値人間には興味が無い(そんな人ばっかりではないと思うけどなぁ)からということでK大を目指し始めたんだ。その後なんとアメリカにわたりUCLAでコンピュータの勉強をし、日本に帰ってきたときには「経済予測の新しいモデルをつくっている」と言っていた(ぼくらのラストサマー)。どこまですごいんだ?コイツ。将来、どんな人間になっていくんだろう?

谷本聡

人呼んでエレキング。電気工作の達人だ。家にはよくわからない機械が並んでいて、コンピュータプログラミングをこなしたこともある。

また、しいて七日間戦争の原因を挙げるとすれば彼であり、七日間戦争のキーパーソンでもある。体育教師酒井の体罰によって松葉杖をつく羽目になってしまったのだ。七日間戦争中には立てこもりメンバーになることはできなかったが、女子とともに外からぼくらをサポートした。エレキングの行ったことはふたつ。ひとつは「解放区放送」の放送。これによってぼくらは外への発信ができるようになった。そしてもうひとつは市長らの談合の盗聴。この盗聴によって市内の悪はひとまず一掃されてしまったのだ。

その後も、銀の鈴幼稚園を助けるにあたっては機械をたくさんつくり、地上げ屋を追い詰めた(ぼくらの天使ゲーム)。また、麻衣を助ける作戦のときには放送設備を作り上げた(ぼくらの秘島探検隊)。からくり屋敷の道具を作り上げたこともある(ぼくらの秘密結社)。魔女との戦いでは兵隊たちを電撃で全滅させてしまったんだ(ぼくらの魔女戦記V)。勝鬨中学校を迷路にしてしまったときも立石監修だ(ぼくらののら犬砦)。そして、グリムファイルをめぐる戦いでは車に爆弾が仕掛けられていることを見抜き、無造作にボンネットを開けるやいなや、あっという間に解体してしまったんだ。

谷本はぼくらの技術担当だ。ぼくらに力があるのはひとえに谷本のおかげと言ってもよいかもしれない。

宇野秀明

チビで怖がりなもんだから、あだ名はシマリスちゃん。七日間戦争のときには安永から腰抜け扱いされてからかわれたこともある。親があまりに過保護でどうにもならなかったんだけど、だんだんテンションがあがってきたのか、ついには親にばっちりタンカを切ってしまった。その勇気に感動したぼくらは宇野をコブラと呼ぶようになったんだ。本人はなんだか少し気に入っていないみたいだったけど・・・。

そのあともやっぱり親の締め付けは厳しかったとみえてサマースクールには参加できなくて、ひどく残念がっていた(ぼくらの修学旅行)。アルラ教事件のときにはあやうくいけにえにされそうになってしまった。高校入学のときには親のせいでスパイをさせられてしまったけれど、相原の機転で逆スパイになり、宇野は志望校入学に成功(といっても裏口だから、ほんとはしたくなかったんだけど)、ぼくらは教師たちの情報をつかむことに成功したんだ。

なんていうか、宇野って損な役回りが多いなぁ。そんな役回りばっかりしていたせいかついにへとへとになってしまったんだ。進学校に入ってからはまわりが敵に見えて、ますます心を乱してしまった。自殺を考えるほどだったのだから、ただごとではない。それでこのままではいけないとぼくらのミステリー列車に参加することにし、捨て子を渡されて、警察に事情聴取されるから、やっぱりなんか損だ。でもそれからはだんだん元気になってきた。

大学に入ってからは怖がりが大分治ったようで、グリムファイルをめぐる戦いではもしかしたら脳が暴走すると言われてもそんなに動じなかった。でも、まだ暗がりはだめらしい。

それからずいぶんたって宇野は結婚することになるんだけど、そのとき英治は驚いてしまった。なぜなら、宇野が見違えるほど落ち着いていたからだ(ぼくらの魔女教師)。

立石剛

家は三代続いた花火師の息子。いつも空を見ているから星のことにも詳しくて、あだなは星の王子様。

七日間戦争ではぼくらのために家から花火を盗み出して爆弾を作ろうとするんだけど、さすがにそれは瀬川のおじいさんに止められてしまって、クラッカーと爆竹を盗み出すことにしたんだ。そして、最後には、手伝ってもらいはしたけれど、仕掛け花火を作ってぼくらからのメッセージを大きく掲げたんだ。

ひかるとのいたずら合戦では立石が花火のことになると熱がこもることを用心していたんだけど、ひかるは正義感の強さを攻めてきたんだ。まんまと騙されてしまった立石はひかるとともに本物の死体を発見してしまう。それは・・・(ぼくらの『第九』殺人事件)。

その後も花火への情熱は衰えることを知らなくて、ぼくらが見物するなか、隅田川の花火大会に親子で出るようになったんだ(ぼくらの秘密結社)。

魔女との戦いでは一撃どっかんと花火を揚げたいなぁ、と思っていたけれども花火が無かったのでがっかりしていた・・・と思ったら有希が花火を持ってきていた!その花火を使ってぼくらはルチア側の兵隊たちを驚かせ、ぼくらの勝利を導いたんだ。

これからも立石は花火師としての道を歩んでいくだろう。隅田川に立石の花火が揚がる日も近い。

秋元尚也

ぼくらの美術担当。七日間戦争では「解放区へようこそ」という巨大な垂れ幕を作っていた。視力もよくて、見張り役としても活躍した。

麻衣救出作戦のときにはダンボールでFBIで使う標的をまねたものをつくり、それを暗闇の中で見せるなか、さらに天野とのコンビネーションプレーで警察が踏み込んだように見せかけ、プロの殺し屋をほんろうした(ぼくらの大脱走)。

また、秘密結社KOBURAの戦いのときには殺し屋を脅すためにコブラ館におおきなコブラの絵を描いている(ぼくらの秘密結社)。

津軽に行ったときには虫送りならぬ校長送りのために、徹夜して馬そっくりの校長とバーコードハゲの教頭をつくりあげたんだ(ぼくらの校長送り)。

その後秋元は苦労したけれども芸術大学に入学することができた。これから秋元はどんな人間に成長していくんだろうか。

小黒健二

典型的ながり勉で、はじめはまわりのみんなを頭っから馬鹿にしていた。じつは、父が役所の汚職で板ばさみになってしまい、ついには自殺してしまったから、勉強してT大に入って官僚になって敵討ちをすることを目指していたんだ。でも、公立学校では一番になれると思ったから公立学校に入ったのに、そこには中尾がいて、どうしても一番になれなかった。そんなとき英治が声をかけてくれたのがうれしかったらしくて、それからはぼくらとつきあうようになった。

高校は宇野と同じ進学校に通い、同じく自殺を考え、家庭内暴力を起こし、自殺未遂を起こしてしまう。「ビルの上から下をのぞいていたら、急に飛び降りたくなっちゃったんだ」。筆者は素人なので断言はしないが、これはうつ病で自殺する人によくある症状である。突然えもいわれぬ心地よさに襲われ、自殺してしまうという。復讐の難しさもここにある。大きな目的のために好きでもないことをしなくてはならず、しかも達成するために自分の苦しみをどうあっても無視しなくてはいけないから、自分自身が一番消耗してしまうのだ。ちなみに宇野はこのことを知らなかったらしい。

そんなとき英治に電話をかけてみたら、セブンシスターズのうちのひとり波川玲子とデートすることになってしまった。女の子と仲良くしたことのなかった小黒は玲子にベタ惚れで、ますます勉強に手がつかなくなってしまったんだ。(ぼくらの『第九』殺人事件)

それでも必死に勉強し、T大一本で受験し、法学部に合格した。小黒の復讐戦は勝利に終わることができるのだろうか。

滝川ルミ

『ぼくらの危バイト作戦』から登場。泥棒の娘。

ぼくらとはじめて絡んだのは、アンポ・クラブにルミが父の為朝の泥棒家業をやめさせるための相談を持ちかけたときだ。為朝はプロの泥棒なのだけどいわば泥棒依存症で、夜になると誘惑に負けてしまうのだそうだ。でも、その人柄はとてもではないがただものではない。最後の仕事を終えた為朝は自首して刑務所に入った。ルミは銀鈴荘に引き取られ、老人たちと一緒に暮らすことになった。

銀鈴荘の持ち主であるさよおばあさんが死ぬとき、銀鈴荘はルミに差し上げるが、老稚園は続けること、とする遺言を受けた(ぼくらの修学旅行)。高校時代にはサッカー部のマネージャーとしてとんでもない面々をまとめあげた(ぼくらの『最強』イレブン)。その後為朝が真人間になって戻ってくるが、そのとき情報を持ち帰ったと思ったら恐喝され、ルミは拉致監禁されてしまう(ぼくらのメリークリスマス)。

そのときは見せることができなかったけれど、ルミには鍵開けの特技がある。はるおばあさんや純子の兄弟とともに殺し屋に捕まったとき、するするっと鍵を開けてしまった(ぼくらのC計画)。

またずっと相原のことが好きで、妹志願のとんでもなく熱烈な手紙を相原に送っている。そして相原からOKされるととんでもなく舞い上がっていた(ぼくらの修学旅行)。

一時相原はひかると仲良くなったし、相原の浮いた話も聞かないし、ルミも何も言わないから、どうなることかと思っていたら、かなりたってからルミの結婚発表があった。相手は・・・相原だ。初志貫徹したのだ。英語は大丈夫なのか、と思いきや、ルミはアメリカの大学を出て秘書をやっていたから、英語は相原以上なのだ。心配要らない。

これは天野にも予想外だったらしく、予想できなかったことを悔しがっていた。ところで相原がなぜ気に入ったかというと、どうやらその動じない性格にあるようだ。なにせ相原は難しいことばっかり考えているから・・・(再生教師)。